ケンシロウ
「おまえはもう、死んでいる」


 二千年の歴史を有する恐るべき暗殺拳「北斗神拳」。一拳に全エネルギーを集中し、肉体の経絡秘孔に衝撃を与え、表面の破壊よりむしろ内部の破壊を極意とする一撃必殺の拳法である。

 核戦争後の荒廃しきった世界では、暴力が弱者を搾取することが当然のように行われていた。眼前で次々とはかなく消えていく命達。この荒んだ世界で、ケンシロウは愛を取り戻し護るため、常に戦いの中に身を置くことを、北斗神拳伝承者として宿命づけられていたのかもしれない。数々との強敵(とも)との熾烈な闘いと別離─、ケンシロウはそのたびに心に哀しみを刻みつけ成長していく。

 百裂拳、岩山両斬波、天破活殺…無数の北斗の技を極め、北斗二千年の中で誰も体得することの無かった奥義・無想転生に達する。さらに北斗宗家の拳をも会得することになる。

 ケンシロウの強さは、その心の内に秘める哀しみと深い愛にある。北斗宗家の血を受け継いでいるという逆らい難い運命の流れの中、乱世がケンシロウを育て、ケンシロウが乱世を治めた。