ラオウ
「わが生涯に一片の悔いなし」
 


 望むものは天──。
 あまりの野望。時代最強の男となり恐怖をもって、あらゆる富、権力をその掌中に治めることを欲した男。「世紀末覇王」を名乗る。北斗四兄弟の長兄にして、身に着けた「剛」の北斗神拳を自らの野望を果たすために使い続けた。師父リュウケンすら、その覇道の前に倒されてしまう。

 しかし、ケンシロウ、トキという強敵に、本来の自分の生きる道に目覚め、拳法家としての闘いに傾注する。覇者ではなく、ひとりの拳士「拳王」として──。

 ラオウは愛を知らなかった。しかしユリアを欲した。女が誰を愛そうが、いかに汚れようが、あるいは死にさえしても、最後にユリアが隣にいれば良い、と。だが、ケンシロウが持つ愛と哀しみの力を知るためにユリアを手にかけようとした刹那、ラオウは自分の中のそれに気づく。彼もまた愛を帯びた伝承者たる人間であったが、不器用にもそれを認めることはなかった。

 恐怖により統治し、愛によって倒れた孤高の強人。ラオウの覇道が無ければ、乱世の統一は望むべくもなかった。ケンシロウ、ラオウ、ユリア、そして数多の強敵たちの存在は、世界の再生に必須のものであったのだ。